・生き残ったものにしか発言する権利はない
成功者の発言はついつい正しいと思いがちだが注意が必要である。
それは生存者バイアスによって真実とは異なっている可能性があるためだ。
生存者バイアスとはある物事について何らかの基準を通過したものだけが判断基準となって真実と比べて非常に偏った結論に至ってしまうことである。
成功者の体験は聞いていて非常におもしろく大抵の場合、行動を促したり君もできるなどと言ってくるからなんだか自分も出来る気がしてきてしまう。
しかし、成功と失敗はコインの表裏であることを忘れてはいけない。成功者がいるときにはその裏側には必ずといっていいほど失敗した人間が居る。
たとえば、「宝くじで3億円当たった人」の話は少し聞いてみたいと思うだろう。
宝くじが当たる前にはどんな生活をしていたか、宝くじが当たった時どう思ったか、そして今どんな生活をしているか。
そういう話だけでも聞いてみたいと考えるのが普通といえる。
しかし、これが「宝くじが外れた人」の話だったらまったく興味が湧いてこない。
なぜなら「宝くじが外れた人」はいくらでも居るからだ。
なんなら今すぐにでも近くの売り場へ行って宝くじを買えばもし貴方がとんでもない運を持っていない限りは「宝くじが外れた人」になることが出来る。
そんなありふれている事象について話す人間に加えて聞きたい人間など居るだろうか?
居ないに決まっている。
ビジネスやスポーツなどの世界においても同じことがいえる。
その業界で成功した人(生存者)の話しか聞こえてこないのが普通である。
注意したいのは成功者よりも失敗者のほうが多いのにも関わらず成功談のほうが多いということである。
成功者という一部の例外ばかりが目に付くとその一部がまるで全体がそうであるかのように思えてきてしまう。
また、生存者バイアスについてアメリカの戦闘機に関するとても納得する話がある。
第二次世界大戦まっただ中のことである。アメリカ人の軍の研究者エイブラハム・ウォールドはある一つの決断に迫られていた。
それは撃墜されるアメリカ軍の戦闘機の数を減らすために戦闘機のどの部分の装甲を効率的に厚くするか、ということである。
もちろん全体の装甲を厚くすれば代わりに機動力が失われてしまいかえって被弾する確率が高まってしまう。
エイブラハムは手渡された戦闘機と弾痕に関する以下のようなデータを見て、悩んだ。
どこの装甲を厚くすればいいのだろう…。
(×印が戦闘機の弾痕があったところ)
×印があったところの装甲を厚くすればそこに被弾する確率が高いので効率的に防御力を高めることが出来るだろう。
…という結論にエイブラハム至らなかった。
むしろ、弾痕がなかったところの装甲を厚くするべきだと結論づけたのである。
なぜなら、弾痕が無かったところに被弾した戦闘機は撃墜されてしまい帰還していない=データを取ることすら出来なかったと考えたからである。
発想の転換である。
撃墜されてしまった戦闘機のデータは残らず、運よく帰還することが出来た戦闘機からのデータしか取れないのであれば、結果が偏るのは当然だといえる。
これも生存者バイアスの典型的な例であるといえるだろう。
一見正しそうに見えるデータでも、そもそもそれは誰を対象にしたデータなのか。意見を聞くことが出来なかった大勢のデータはどうだったのか。
そうやって見えていないデータについて気を配ることによって、真実に近づく可能性も高まっていくだろう。
成功者は○○と言っているが、実際身の回りの人の話を広く聞いてみて事実はどうなのかを見極めなければならない。
生存者バイアスに気を付けることにより思いがけない正しい結果に行き着けることが出来るのだ。
とはいえ。まあ。
宝くじを当ててしまえば結局そんなことはどうでもよく、好き勝手に宝くじを買いなさいだとか今はこんなリッチな生活をしているだとか胸を張っていうことが出来る。
ぜひ成功者側に回って生存者バイアスを広める側になってみたいものだ。
さて皆さん、宝くじを買いに行こうじゃないか。